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しびれは体からのメッセージ

UP:2023.11.16

更新日:2023.11.16

「足先がピリピリする」「指先に力が入らず物を落としてしまう」といった、体のあちこちに現れる〝しびれ〟の症状。考えられる原因や病気について、京都府立医科大学で教えてもらいました。
イラスト/オカモトチアキ

感覚経路に障害が起きることで発生

「体には、情報を伝達するための神経が張り巡らされています。感覚を受け取る皮ふなどの器官から末梢(まっしょう)神経、脊髄、脳とつながっていて、この経路のどこかに障害が起きることで、しびれが生じます」と教えてくれたのは、京都府立医科大学大学院運動器機能再生外科学の土田真嗣(しんじ)先生。

「例えば正座をすると足がしびれますね。これは足の神経と血管が一時的に圧迫されているから。長い時間、神経が圧迫されたり病気で血行が悪くなったりすると、神経に必要な栄養が行き渡らずダメージを受けることもあります」

正座のしびれは一時的なものですが、病気の症状として現れることもあるのだとか。気になる場合は、早めに病院で診てもらうといいですね。

まずは症状の確認を

一言でしびれといっても「感覚が鈍くなり、痛みや温度を感じにくい」「正座後のようなチクチクした違和感が続く」「力が入らない、動かしにくい」など、感じ方は人それぞれあるよう。どこがどんなふうにしびれるのか、まずは自分の症状を把握することが大切です。自覚症状のチェックポイントを下記にまとめました。病院で医師に症状を伝えるときの参考にしてみて。

受診時に役立つセルフチェックシート

しびれている場所
指先、手のひら、足の裏、肘、太もも、腰など。「小指だけ」など細部のみに症状が現れることも

しびれ方
感覚が鈍い(痛みや温度を感じづらい)、力が入らない、動かしづらい、ピリピリ・チクチクする、など

しびれの起こり方・治まり方
起こり方/前触れなく突然に、寝起きや歩行中といった決まったタイミングがある、ずっと同じしびれがある、など
治まり方/数分で落ち着く、体を動かすと和らぐ、など

その他の自覚症状
ろれつが回らない、頭や首が痛い、物が二重に見える、歩くときにバランスが取れない、物忘れが増えた、食後に急激に眠くなる、など

しびれの広がり方
片手(足)だけ、両手(足)とも、半身(右側、左側)、全体などしびれる範囲を確認。また、その範囲が時間経過でさらに広がっているかどうか

しびれの程度
違和感はあるが支障はない、細かい動作ができない、物を持てない、しびれと痛みで眠れない(歩けない)など

経過
症状を自覚したのはいつか。自覚から受診までに、しびれる場所やしびれ方などに変化があったか、など

持病や生活習慣
高血圧、高血糖といった持病があるか。手首や腰に負担のかかる作業が多い、デスクワークが多いなど生活習慣で思い当たることがあるか

しびれを伴う病気は多岐にわたり、しびれる場所などによって対応する診療科が異なるのだとか。そこで整形外科、内分泌内科、脳神経内科分野の専門家に、よくある症例やしびれの特徴を教えてもらいました。紹介する症例に心当たりがあれば、各診療科を受診してみて。

整形外科分野

指先がしびれるのは手首やひじの負担が関係

「末梢神経や脊髄が傷つくことで手足がしびれることが多く、傷つく部位によって両側や片側だけ、場合によっては体幹部(胴体など)に生じることがあります。また、体を動かしたり姿勢を変えることでしびれたり、逆に和らぐなど程度が変化するものも。これらは整形外科の分野であることが多いですね」と、土田先生。よくある症例を教えてもらいました。

「手指がしびれてペンや箸が持ちづらかったり、ボタンを掛けるなどの細かい動作が難しいと感じたことはありませんか? このような症状は、手首の正中(せいちゅう)神経が傷ついて生じる『手根管(しゅこんかん)症候群』かもしれません。手指がしびれる病気として最も多く、手を振る、手首を回すなどすると一時的に症状が和らぐことがあります。

40歳以上の女性に生じることが多いという特徴も。男性に比べ3〜5倍のリスクというデータもあります。男性の場合、75歳以上の人に多いですね。原因不明の場合が多く、骨折や腱鞘(けんしょう)炎、振動病(※)など手首の負担のほか、実は肥満、喫煙、糖尿病などが影響することも考えられています」

※チェーンソーやグラインダー、草刈り機といった工具・機械の振動による末梢神経障害

「手根管症候群」の症例
手首の正中神経が圧迫されて傷つくことで、親指、人差し指、中指、薬指の親指側がしびれます。深夜や早朝にしびれや痛みが強くなる傾向が。親指の付け根にある母指球の筋肉が衰えるため、親指と人さし指でOKサインの形を作るのが難しくなり、箸やペンを持つ、手芸をするなどの動作が難しくなります。

薬指・小指のみがしびれる場合は「ひじの神経が関係する『肘部管(ちゅうぶかん)症候群』の可能性があります」とのこと。これらは日常的によく見られる病気ですが、放置すると悪化することもあり、高齢になるほど回復しにくくなるそう。

「悪化すると感覚が鈍くなり、本来感じるはずの痛みまで感じなくなる、まひに近い状態に。症状が2週間以上続く場合は相談を」

足腰のしびれは脊髄の圧迫が原因に

足腰の場合、しびれを感じるときの姿勢にも注目を。

「前かがみの姿勢でしびれるなら、背骨の骨と骨の間にある椎間板が飛び出して脊髄を圧迫している『腰椎椎間板ヘルニア』の疑いが。重い物を持ち上げるなど、腰に負担がかかっている人に多い症状です」

一方、ヨガや水泳で体を反ったり、あおむけになると生じるしびれは『腰部脊柱管狭窄(ようぶせきちゅうかんきょうさく)症』が考えられるそう。

「日本人はもともと、脊髄が通っている背骨の脊柱管が細いといわれています。この管を支える靭帯(じんたい)がスポーツや加齢で硬く分厚くなることで、脊髄が圧迫されてしまうのです。

そのため高齢者に多いのが、歩行中の足のしびれ。足の裏などがチクチクと痛むのですが、立ち止まって前かがみになると和らぎ、また歩けるように。このように数分おきに休憩が必要になるのも、腰部脊柱管狭窄症の特徴といわれています」

教えてくれたのは

京都府立医科大学大学院 医学研究科 運動器機能再生外科学
講師 土田真嗣先生

内分泌内科分野

両手足に現れると糖尿病性の恐れが

「手足のしびれの中には、糖尿病の合併症として引き起こされるものがあります」とは、同大学内分泌・代謝内科学の濱口真英先生です。

「『糖尿病性神経障害』は、両手足に左右対称に現れるのが特徴。手袋と靴下を着ける部分がしびれ、末端から感覚が鈍くなっていきます。整形外科・脳神経内科分野のしびれと併発することもあり、糖尿病性神経障害の影響で治療に時間がかることもあります」

糖尿病性のしびれの症状が現れているものの自覚がなく、慢性的に手足の感覚が鈍くなっているケースも。

「足の裏に新聞紙が張り付いているような、厚手の靴下を履いているような違和感がある、痛みや温度を感じづらい、食後に強い眠気がある、もの忘れが増えたという人は注意したいですね。特定健康診断を受けるなど、まず自分の体の状態を知ることが大切です」

また、「治療を始めて血糖が改善されると、鈍っていた感覚が急に戻り、しびれや痛みを感じるようになることも知っておいてほしいです」と濱口先生。「特に足は、こむら返りのような痛みから不眠に悩む人も。しかし、この症状は治療を続けることで徐々に落ち着いていきます。途中で治療をやめず、不安に思ったら主治医に相談してくださいね」

教えてくれたのは

京都府立医科大学大学院 医学研究科 内分泌・代謝内科学
講師 濱口真英先生

脳神経内科分野

半身のしびれは脳梗塞の前兆かも

脳の病気の恐れも。

「脳の血管が閉塞したり破裂したときに生じる『脳梗塞』『脳出血』『くも膜下出血』といった脳卒中は緊急性が高く、命に関わる病気です。血管が詰まり脳組織が壊死(えし)したときや、血管が破裂して出血によって脳が傷つくと、手足がしびれることがあります」と話すのは、同大学脳神経内科学の准教授・笠井高士先生。

「脳が傷ついた場合、右側の手と足、左側の手と足のように半身にしびれが現れることが多いです。脳が原因のとき両手あるいは両足が同時にしびれる、右手と左足がしびれるといった現れ方はまれです。

前触れなく突然しびれ、特にその部位に動かしにくさ(まひ)を伴っているときは要注意です。物が二重に見える、ろれつが回らない、嘔吐(おうと)、頭痛ないし頚部(けいぶ)痛、まっすぐ歩けない歩行障害といった症状が同時に現れることもあります。これらの症状を自覚したらすぐに受診してください。

特に気をつけたいのが、症状が急速に消えた場合。こうした改善は血管の詰まりが一時的に解消された場合にみられますが、本格的に脳梗塞を発症する前兆といえます。もし数分ないし数時間で症状が落ち着いたとしても、放置せず早めに病院へ行ってほしいです」

教えてくれたのは

京都府立医科大学大学院 医学研究科 脳神経内科学
准教授 笠井高士先生

(転載元:「リビング京都」2023年10月14日号より)

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