睡眠中のトラブル
UP:2024.2.22
更新日:2024.2.22
寝ている間のいびきや寝言、歯ぎしり…。「大したことない」と放置しがちですが、時には思わぬ病気が潜んでいることも。読者が悩んでいる睡眠中のトラブルについて、各分野の医師に聞きました。その原因、対処法とは?
イラスト/ずーたん
夫から「大きな声で寝言を言っていた」と言われることが。悪い夢を見ていた気も…(OY・67歳)
ストレスや悩みで起こりがち レム睡眠行動障害の可能性あり
京都府立医科大学精神機能病態学講師の松岡照之先生によると、寝言はストレスや悩み、うつ、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患、高熱があるとき、生活習慣の乱れで眠りが浅いときに生じやすいとのこと。
「ぼそぼそ言う程度の寝言は誰にでもあります。心配なのは手足を動かす、歩き回るといった行動を伴うケース。レム睡眠時に体の力が抜けず、夢に反応して行動してしまう『レム睡眠行動障害』が疑われます。転倒などによるケガの危険もあるため、早めの治療が必要です」
中高年以上に多い病気ですが、若者がなることも。「レビー小体型認知症」の初期症状として現れるケースもあります。
OYさんには「生活習慣を見直して睡眠の質を高め、なるべくストレスを減らす工夫をしましょう」とアドバイス。大声の寝言が連日続くなら、レム睡眠行動障害や精神疾患の可能性もあり、受診が必要だそう。
適した診療科は、心療内科や精神科、神経内科など。要因や症状に応じて、主に投薬による治療が行われます。睡眠の改善方法は続きで紹介。
夫のいびきがひどい。肥満のせいかと思っています(SA・52歳)
睡眠時無呼吸症候群かも 原因は肥満だけではありません
「いびきは、鼻から喉までの上気道が狭くなることで起こります」とは、同大学呼吸器内科学医師の田中理美(さとみ)先生。
「いびきをかくのは肥満気味の人というイメージがありますが、実は原因はさまざま。飲酒や喫煙、疲労、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、扁桃(へんとう)肥大、骨格の問題なども考えられます」
連日いびきが続き、睡眠中に呼吸が止まる時間があれば「睡眠時無呼吸症候群」の可能性が。
「日中に毎日のように強い眠気を感じる場合も同疾患が疑われます。放置すると体に酸素が十分に行き渡らず、心臓や脳、血管に負担がかかるため高血圧や脳卒中などのリスクが高まります。飲酒・喫煙習慣がある人は控えてみて。枕を低くしたり、寝るときの体勢を横向きにしたりすると治まることもありますよ」
よくならない場合、睡眠時無呼吸症候群の兆候がある場合は、早めに呼吸器内科や耳鼻科へ。
「病院では、上気道が狭くなっている原因を探り、その治療を進めます。扁桃肥大が原因なら手術をすることも。検査の結果、睡眠時無呼吸症候群と診断された人には、マウスピースやマスクのような装置で気道を確保する治療が一般的です」
寝つきが悪い。寝る前のスマートフォンが原因?(TE・37歳)
不眠を招く生活習慣 コーヒーや読書も注意
「寝つき、目覚めの悪さは、多くの場合、不規則な生活、昼寝のしすぎ、運動不足、寝酒、寝る直前のカフェイン摂取など、睡眠を妨げる生活習慣に原因があります」とは、前出の松岡先生。
TEさんの疑問には「寝る前にテレビやスマートフォンを見て脳が刺激されるのも一因でしょう。本や漫画を読み、内容にのめり込んで寝つきが悪くなる場合も。ストレスや悩みなど精神的な要因も考えられます」。
まずは生活習慣の見直しを。
「決まった時間に起き、太陽の光を浴びて体を目覚めさせるのもコツ。夜は早く眠ろうとすると、かえって寝つきが悪くなるので、眠くなってから床につくように。寝る前には興奮しない程度の軽い読書、音楽、アロマセラピーなど、自分に合うリラックス法を実践し、布団に入ったらスマホを見るのをやめましょう」
睡眠の質が悪い状態が続くと、日中の眠気で集中力が低下しがちに。生活習慣病や認知症の発症リスクも高まると考えられているとか。
「つらいときはかかりつけの内科や心療内科、精神科で相談を。治療は生活指導と睡眠薬の処方が中心です。最近の睡眠薬は依存しにくく副作用も少ないので、用法を守れば心配せずに服用できますよ」
家族みんなが歯ぎしりしていると思う。私は食いしばりがあって顎がだるい(NK・49歳)
歯へのダメージを防ぐ治療が必要 深く眠れる環境を整えましょう
歯ぎしりや食いしばりも、眠りが浅くなると起こりやすいそう。同大学歯科口腔科学学内講師の大迫(おおせこ)文重先生は「ストレスや疲労、喫煙、過度の飲酒、かみ合わせなど、複数の原因が重なる傾向があります。中には、逆流性食道炎や睡眠時無呼吸症候群といった病気が関わっているケースも」と話します。
歯ぎしりや食いしばりが続くと、歯がすり減る、割れる、顎(がく)関節症になるなど、さまざまな影響が。肩こりや頭痛につながる人も少なくないといいます。
「起床時にNKさんのように顎のだるさを感じる人、歯が減ったり欠けたりしている人、かぶせものがよく外れる人は、睡眠中に歯や顎に強い力がかかっていると予想されます。負担を緩和するため、歯科医を受診してマウスピースを装着する治療を受けることをおすすめします」
自分でできる対策はあるのでしょうか。
「できる限りストレスや疲労を解消し、睡眠しやすい環境をつくることです。それでも激しい歯ぎしり、食いしばりが続く際は、例えば不眠の症状があるなら心療内科や精神科などで、治療を受けた方がいい場合もあります」
読者からは「9歳の娘の歯ぎしりがすごくて心配」(HK・42歳)との声も。これには、「日中によく遊ばせたり生活リズムを整えたりと、熟睡できるよう工夫してみては。ただ、子どもの歯ぎしりは成長とともに治まることも多く、歯や顎に影響が出るケースは限られています。気になる場合は歯科医に相談を」とアドバイスしてくれました。
歳をとるにつれ、こむら返りによくなる。一日中立ち仕事だからかも(YT・67歳)
主な原因は電解質(ミネラル)不足 加齢による筋力低下も関係
ふくらはぎの筋肉が急に強く収縮してけいれんを起こすこむら返り。
「主な要因は、発汗や栄養不足によって神経の情報伝達や筋肉の伸び縮みに使われるマグネシウム、ナトリウムなどの電解質(ミネラル)のバランスが崩れること」と教えてくれたのは、同大学整形外科講師の長江将輝(まさてる)先生。
「疲労や筋肉量の低下、冷えによる血行不良も関係します。YTさんは、立ち仕事で筋肉に負担をかけたことと、汗をかいて電解質が不足したことが原因でしょう」
こむら返りが起きたときは、爪先をゆっくりと手前に引っ張ってふくらはぎの筋肉を伸ばして対処を。また、ミネラル豊富な海藻などを食事に取り入れ、運動時には水分補給を心がけることが予防につながります。
「寝る前にスポーツドリンクなど電解質を含む飲料を1~2杯飲む、足浴などで脚を温めて血行をよくする、脚のストレッチをするといった対策も有効です」
頻発する場合や、ほかにも不調がある場合は、何らかの病気かも。
「歩行中に脚のしびれや痛みなどがあれば、『腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症』という腰の神経が通っている管が狭くなる病気が疑われます。重症だと手術になることも。早めに整形外科で診察を受けましょう」
糖尿病、閉塞(へいそく)性動脈硬化症などが原因の場合もあるため、まずかかりつけの内科で相談しても。筋緊張緩和剤や漢方薬が処方される場合もあるそうです。
(転載元:「リビング京都」2021年2月20日号より)