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コラム

大人のアレルギー

UP:2024.3.7

更新日:2024.2.22

「何だか調子が悪いな…と思ったら、いつの間にか花粉症になっていた」「急に小麦アレルギーになった」といった声を耳にすることが増えました。そこで専門家に、大人になってから発症しやすいアレルギーについて教えてもらいました。
イラスト/オカモトチアキ

繰り返し食べるもの、触れるものが要因に

「近年、花粉症によるアレルギー性鼻炎や結膜炎の患者が増加しています。また、成人の10人に1人は、食物アレルギーといわれています」と教えてくれたのは、京都府立医科大学の妹尾高宏先生です。

「体には、体外から侵入するウイルスなどの異物から体を守る〝免疫〟という機能があります。この機能が、花粉や特定の食品・素材に含まれる成分を異物と判断し、排除しようと過剰に働くことでアレルギー症状が引き起こされるのです。

昔は平気だったのに急に発症した、という人もいますね。人は繰り返し食べたり、触れたりするものに対して免疫が働きやすくなり、あるとき急にアレルギーを起こします。そのタイミングや摂取量には個人差があります」と妹尾先生。

昔と比べて、さまざまな食品が手に入りやすく、食べる機会が増えたのも一因とか。「急増しているのはナッツアレルギー。お菓子に含まれていたり健康目的だったりと、ナッツを食べる頻度や量が増えた結果といわれています」

アレルギーになりやすい人の特徴は?

「特定の食品をよく食べる地域の人は、その食品の影響を受けやすいですね。引っ越しや旅行で環境が変わると、症状が改善することもありますが、別のアレルギーを発症することも。一度アレルギーになると、ほかのアレルギーも発症しやすくなります。

また、先進国をはじめ衛生状態の良い国は、アレルギー患者が多い傾向に。清潔すぎても、免疫が過剰に反応してしまうことがわかってきました」

ほかにも妊娠や出産、加齢といった体の変化がきっかけになることもあるようです。

職業性アレルギーも

職場で毎日のように触れるものに、アレルギーが誘発されるケースも。 

「問題ない人が多いですが、例えばパンや麺の製造には大量の小麦を使用するため、小麦アレルギーになる人がいます」と妹尾先生。同様にペンキ、ゴム手袋、ヘアカラーリング剤などの成分でアレルギーを発症する人も。

「職場で鼻炎やぜんそく、皮膚炎などを引き起こすものは〝職業性アレルギー〟に分類されます。症状や状況は人それぞれ。まずは産業医や身近な病院のアレルギー科に相談を。治療や生活指導、部署異動など、実現可能な範囲で対処法を探ってみてください」

単なる体調不良ではない場合も

アレルギーには、特定の成分について摂取・接触してすぐに症状が現れるもの(即時性)と、数時間から半日以上たってから症状が現れるもの(遅発性)があります。

「遅発性アレルギーは原因を特定するのが難しく、症状も消化不良などありふれたもの。体調不良として見逃しやすいので〝隠れアレルギー〟とも呼ばれます」

隠れアレルギーに気づくには?

「頻繁に体調不良を感じるなら、少し前の食事や行動に共通点がないか振り返ってみましょう。思いもよらなかったものが、原因になっていることも。

例えばこんなケースがありました。納豆が好きでよく食べていたという人が、海でクラゲに刺されてから、なぜか納豆を食べるたびに気分が悪くなっていたとか。これは、クラゲの毒と納豆の成分が似ていることから、免疫がその成分に反応してアレルギー症状を起こしていたのです。マダニに刺されたことがある人が、豚肉・牛肉・ゼラチンなど獣肉アレルギーを発症した例も。

事前に知っていなければ気づけない因果関係のアレルギーもあるので、不審に思ったら受診してみてください」

隠れアレルギーの症状

頻繁に以下の症状がある場合、アレルギーを発症している可能性があるそう。毎回同じものを食べたり触れたりしていないか振り返ってみては。

  • 消化不良
  • 胃もたれ
  • 胸やけ
  • 吐き気
  • 体がだるい、倦怠(けんたい)感
  • イライラする
  • 集中力が続かない
  • 頭痛

花粉症が引き起こす口腔アレルギー症候群

果物や野菜を食べて口の中がかゆくなったり、しびれたりした経験はありませんか?

「食べて通常15分以内に、口の中や喉の粘膜にのみ症状が出るのが〝口腔(こうくう)アレルギー症候群〟です」

その食品だけが原因ではないアレルギーで、よくある食物アレルギーとは異なるとか。

「実は、花粉症が関連しています。花粉症の人が、花粉の成分に似たタンパク質を持つ果物・野菜を食べると、体が勘違いを起こすのです。

シラカンバの花粉は、ナッツ類やリンゴなどの成分に似ています。基本的に口だけの症状ですが、たくさん食べすぎるとアナフィラキシーに至ることも」

今や日本人の5人に1人が花粉症といわれ、地域に自生する木々によって、影響を受けやすい花粉も変わるようです。京都はスギが多いですね。

「スギ、ヒノキ、シラカンバの花粉が飛散する季節。花粉症の人は、(下表を参考に)当てはまる食品に注意するなど、意識してみてください」

各種花粉によく似た成分を持つ食品の一例を紹介します。

ヒノキ科(スギ、ヒノキ)トマトなど
カバノキ科(ハンノキ)バラ科の果物(リンゴ、モモ、イチゴなど)、ウリ科の果物(スイカ、メロンなど)、マンゴー、キウイ、ナッツ類、セロリ、大豆(主に豆乳)など
カバノキ科(シラカンバ)バラ科の果物、マンゴー、キウイ、ナッツ類、セロリ、大豆(主に豆乳)、マスタードなど
イネ科(オオアワガエリ、カモガヤ)メロン、スイカ、トマト、ジャガイモ、小麦、米など
キク科(ブタクサ)スイカ、メロン、バナナなど
キク科(ヨモギ)ニンジン、セロリ、ナッツ類、トマト、キウイ、マスタードなど

小麦、甲殻類、ナッツ…大人が注意したい食品

年齢によって、発症しやすい食物アレルギーにも違いがあるようです。

「乳幼児期は鶏卵や牛乳アレルギーが圧倒的に多いですが、成長するにつれて治る場合も。一方、大人になると食べる物の選択肢が広がることで、さまざまな食品を摂取する機会が増え、アレルギーを発症しやすくなります。20歳以上は小麦、甲殻類、魚類、果物類、そばの順で多いですね」

では、食物アレルギーとどう付き合っていけばよいのでしょうか。

「すでにアレルギーが判明している場合は、原因となる食品を避けましょう。日頃から気をつけたいのは、バランスの良い食事です。糖質を取りすぎるとアレルギーを誘発しやすいという、アメリカの研究報告も。ジュースやお菓子は適量を心がけたいですね。

また、免疫力の低下が発症の引き金になることもあるので、適度な運動と十分な睡眠、ストレスの少ない生活を送ることが大切です」

これもアレルギー?

Q.最近よく聞く「寒暖差アレルギー」って何?

A.寒暖差のある場所で起きるせきやくしゃみ、鼻水といった症状を一般的に〝寒暖差アレルギー〟と呼びます。症状は似ていますが、実はアレルギーとは関係なく、気温変化の刺激による体の自然な反応。症状がひどい場合は、耳鼻咽喉科などで受診を。

Q.「成人ぜんそく」の原因は?

A.激しいせきやたん、息切れなどを起こす、成人ぜんそく。そのうち約15%は職業性アレルギーによるもの。ハウスダストやダニによるアレルギー性ぜんそくも30%ほどありますね。しかし大人、とくに高齢になるほどアレルギー以外に要因が。タバコの煙、ストレス、気温の変化、感染症の影響も考えられます。

検査で自分の体質を知ろう

アレルギーに適切に対処するためにも、まずは自分の体を知ることが大切ですね。

「アレルギー検査はアレルギー科や耳鼻咽喉科、皮膚科などで受けることができます。近年は血液検査で判別できるアレルギー物質が増えました。金属アレルギーなどを調べるパッチテスト、プリック検査もあります。

ただし、検査はその時点でのアレルギーの要因を知るもの。引っ越しなどで環境が変わり症状が変化したら、再度検査を受けてみるなど自分の体質を把握することも大事です」(妹尾先生)

教えてくれたのは

京都府立医科大学 膠原病・リウマチ・アレルギー科
病院助教 妹尾高宏先生

(転載元:「リビング京都」2023年3月11日号より)

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