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コラム

“幸せホルモン”セロトニンを増やして健やかな毎日に

UP:2024.3.27

更新日:2024.3.27

私たちがハッピーな気分でいられるよう作用する、体内物質。それらは〝幸せホルモン〟と呼ばれ、いま注目されています。なかでも「セロトニン」という物質は、私たちの体内で自然に生成されるのだそう。京都府立医科大学 大学院医学研究科 生体免疫栄養学教授の内藤裕二先生に教えてもらいました。

イラスト/フジー

平常心でいられるようコントロールする力が

「人に幸せを実感させたり、健康で過ごせるよう作用する体内物質が、幸せホルモンと呼ばれているようですね」と内藤先生。

「その中のひとつ、『セロトニン』という物質には、不安やストレスをやわらげる力があるとされています。また、興奮作用のある『ノルアドレナリン』や、快楽感をもたらす『ドーパミン』が、勝手に暴走しないようコントロールする力も。すなわち、人々が平常心でいられるよう、心を落ち着かせる役割を担うといわれています」

体内で、しっかり分泌されていると安心感や幸福感につながりますが、逆に不足していると、ストレスに弱くなったり、向上心や意欲が低下し、不安を覚えたり、怒りやすくなったりしてしまうのだそう。

体内のセロトニンは約90%が腸に存在

私たちの体内にある「セロトニン」は、約90%が腸に、残りが脳や血管に存在するのだとか。

「『セロトニン』については、腸内細菌を持たない、無菌マウスを使った実験が知られています。無菌マウスは腸で『セロトニン』が作られず、通常のマウスに比べて興奮しやすく攻撃的な性格になり、さらに落ち着きや学習能力もなかったと報告されています」

さらに、内藤先生からは、こんな話も。

「大事な会議やスピーチの前などに緊張しておなかが痛くなった、ということがありますよね。これは、脳が感じたストレスが腸へ伝わり、腸の動きが過敏になってしまったせい。逆に腸が脳に影響を及ぼすケースもあります。このように、脳と腸が相互に影響することを『脳腸相関』と言います。医学的によく知られた現象です」

そうして「腸の『セロトニン』が全身に及ぼす影響は大きいと考えています」と。

体内の「セロトニン」を増やすカギは、どうやら腸にあるようです。

「セロトニン」の生成には乳製品や大豆食品の摂取が大切

さて、体内の「セロトニン」を増やすにはどうすればいいのでしょう。内藤先生によると「『セロトニン』のもととなるのは、『トリプトファン』という必須アミノ酸(※1)の一つで、人の体内で生成することはできません」とか。

「トリプトファン」は、食品のタンパク質に含まれていて、食べ物や飲み物から体に取り入れなければならないそう。

「腸に『トリプトファン』が届けられると、腸内細菌の働きによって『セロトニン』が生成されるようになります」

ということは「トリプトファン」を多く含む食品を毎日の食事で、意識して取り入れるといいのでは。簡単そうですね。

「ただ、単純に『トリプトファン』が多い食品をとればよいという考えは間違っています」と内藤先生。「そうした食品のなかでも、腸内環境にも優しい植物由来のもの、乳製品、発酵食品を選ぶ必要があります。具体的には、牛乳やヨーグルト、みそや豆腐、卵、バナナなどがいいですね」

(※1)人に必要なアミノ酸のこと。全部で9種類あります

良好な腸内環境につながる食物繊維も併せて

「『セロトニン』には、腸を動かす働きがあって、おなかの調子が悪いと、腸の中の多くの『セロトニン』を使ってしまいます。ですから、いつも腸内環境を整えておくことが大切」と内藤先生。

「腸内環境を整えるためには、善玉菌のエサになる食物繊維を多くとること。しかし、日本人は、この食物繊維が圧倒的にとれていません。成人で1日24g以上の摂取が推奨されていますが、現在は平均14g程度といわれています。

そこで、特にすすめたいのは、腸で発酵しやすく、腸内細菌が利用しやすい発酵性食物繊維。主食でいえば玄米や麦といった全粒穀類、副食は豆類、根菜、海藻などです」

半面、動物性脂肪や塩分、砂糖のとりすぎには注意が必要だそう。

「腸の状態は体にも心にも大きく影響します。腸の健康を心がける〝腸活〟を行うことはさまざまなメリットが期待できます」

規則正しい生活をすることも大きな要因に

食事だけでなく、生活習慣の面でも心がけることはあるようです。

「現代人に注意してほしいのは、スマートフォンやパソコンを夜遅くまで見ず、しっかり睡眠をとるということ。毎日きちんと朝起きて太陽の光を浴びる。ゆとりを持って朝食をとる。適度に運動するなど、規則正しい生活を心がけてほしいです」

朝食は腸を目覚めさせるので、抜くのはNG。睡眠は十分とれないと体内時計が狂い、腸の調子を崩す一因になるのだとか。生活の乱れは、腸の不健康につながり、「セロトニン」を減らしてしまうことに。

「『セロトニン』は体内にためておけません。しかし、毎日の食事や運動、生活リズムを整えることで、生成し続けます。

日々の行動が『セロトニン』の生成に大きくかかわってきます。ちょっとした心がけで、幸福感も健康も手にいれられると思いますよ」

セロトニンを増やすポイントは…

  • トリプトファンや食物繊維の豊富な食品をとる
  • 太陽の光を浴びる
  • 適度に運動する
  • きちんと食事と睡眠をとり、生活リズムを崩さない

いずれも、続けることを心がけて!

教えてくれたのは

大学院医学研究科
生体免疫栄養学 教授
内藤裕二先生

(転載元:「リビング京都」2022年6月18日号より)

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