加齢や生活習慣も原因に 体のニオイ夏期講座
UP:2024.5.31
更新日:2024.5.31
蒸し暑くなると、気になる周囲や自分の体臭。今回は、誰でも発生する可能性のある〝加齢臭〟を中心に、体のニオイの原因と予防法を専門家に教えてもらいました。
イラスト/かわすみみわこ
年とともに強まる体臭の仕組み
男女ともに、年齢を重ねると体臭が出やすくなるといいます。
「原因は汗と皮脂の状態にあります」と話すのは、京都府立医科大学皮膚科学の丸山彩乃先生。
「汗腺からは汗のほか脂質なども分泌されています。年齢とともに汗腺の機能は低下。汗の量が減少し、相対的に脂質の割合が増えます。肌表面に付着した雑菌がこの脂質を分解するときにニオイが発生します。
また、しわが増えると汗が流れにくくなり、脂っぽい汗で皮膚がコーティングされたような状態に。その皮脂が酸化して独特のニオイが出ます」
このような加齢による体臭には、中年期に発生しやすい「ミドル脂臭」と「加齢臭」があります。ただし、年齢だけではなく、生活習慣なども体のニオイに影響するそうです。
ミドル・シニア期の二大体臭
ミドル脂臭
30~50代で、特に男性に多く発生し、「酸っぱい」「脂っぽい」「ツーンとしたニオイ」などと表現される体臭。主に頭皮、顔、背中で皮脂腺が過剰に働き、脂質が分泌されることが原因。
加齢臭
加齢による皮脂の増加のほか、汗腺機能の低下や皮膚の老化などが原因に。首筋、頭皮、耳の後ろのほか、脇、陰部などから発生。40代以降で発生しやすくなり、「酸っぱい」「ほこりっぽい」といったようなニオイがするといわれます。
いずれも個人差が大きく、男性でもあまり臭わない人もいれば、強く臭う女性もいます。
生活の乱れから発生する体臭
脂質の多い食事や強い香辛料の多量摂取、過度の飲酒といった食生活の乱れのほか、運動不足、睡眠不足、ストレスなどによる自律神経の乱れも体臭の原因に。「汗と皮脂の過剰な分泌につながり、ニオイが発生します」。喫煙によりたばこの成分が汗や皮脂に混じって、不快なニオイとなることも。
自分の体臭をチェックするには?
シャツのえりの内側や枕カバーなど、ニオイが発生しやすい頭・首が触れたものを嗅いでみましょう。「ただ、体臭は自分ではわかりにくいもの。『臭うのでは』と思い込まず、家族や親しい友人などに確認してもらうのが一番です」(丸山先生)
日々のケアがポイントに
「体のニオイを防ぐには、日々の体内外のケアが大切」と丸山先生。
「まずは汗や皮脂、肌表面の雑菌を入浴で洗い流しましょう。ただ、洗いすぎは逆効果に。頭皮、脇などニオイの出やすい部分をせっけんなどの泡でやさしく洗ってくださいね」
体内のケアとしては、食事と生活習慣を整えるのが重要とのこと。
「こまめな水分補給とバランスのよい食事は汗・皮脂の正常な分泌につながり、体臭を軽減します。規則正しい生活を心掛け、自律神経を整えることも同様です」
清潔を保つこと、そして心身ともに健康的な生活が、ニオイの予防には必要なのですね。
体を洗う
汗をかいたらできるだけ早く入浴し、ニオイのもととなる細菌の繁殖を防いで。洗う時は、汗をかきやすく皮脂分泌が多い部分(頭皮、鼻の下、脇、陰部、足の指など)を中心に、よく泡立てたせっけんやボディーソープを手に取りやさしくマッサージします。殺菌効果のあるボディーソープ、体臭予防成分を含む入浴剤も活用を。
汗をかいていないのに何度もシャワーを浴びたり、ナイロンタオルで強くこすったりすると、皮脂の取りすぎで皮膚バリアが崩れ、ニオイのもとになります。
飲む・食べる
まずは十分な水分摂取を。水分が不足すると汗をかきやすくなりニオイも強くなります。一般的に1日約2ℓを摂取することが推奨されていますが、スポーツ後や暑い時期は適宜量を増やして。1、2時間ごとに少量の水を飲む、など習慣化も有効です。
脂質の取りすぎに注意し、栄養バランスのよい食事を。食物繊維が豊富な野菜や果物、ヨーグルトや納豆などの発酵食品は、腸内環境を整えて代謝をスムーズにし、ニオイの発生を抑えます。ニンニクやタマネギといった香りの強い食材は控えめに。
心身を整える
睡眠時間を十分に確保し、適度な運動を心掛けることで自律神経を整えて。リラックスする時間を積極的に設けることで、ストレスをためないようにしましょう。たばこやアルコールの過剰摂取はNGです。
制汗剤や柔軟剤は適切に
夏場によく使われる制汗剤。人によっては香料やパウダーでかぶれて、肌荒れから細菌が繁殖する原因にも。肌に合ったものを使用することが大切です。
また、繊維をコーティングしてしわを予防するタイプの柔軟剤は、衣服の通気性を低下させ汗や湿気がたまる一因に。適量を守り、肌着への使用は避けて。
正しく汗をかき正しくケアしよう
体のニオイの一因は汗にありますが、「汗自体はほぼ無臭。汗をかくのは悪いことではなく、むしろいいこと」と丸山先生は話します。
「エアコンの効きすぎた部屋にばかりいて汗をかかない状態では、汗腺のバランスがくずれて、ニオイのもととなる成分を多く含む汗が出やすくなってしまいます。
適度な温度で、体も動かしていい汗をかくこと。そして、こまめなケアが大切ですよ」
(転載元:「リビング京都」2023年6月18日号より)